平成22年の春、少年の頃からの夢であった小さな研究所を創設しました。何事にもとらわれずに自由な発想で研究することができる創造の空間です。規模は小さいですが、世界レベル、世界一の研究を目指しています。ロンドンにある英国科学博物館で、再現されているジェームス・ワットの10畳ほどの小さな研究室を初めて見た時、その片隅で実験をしたり、空想に耽ったり、ジョン・ウイルキンソンと夢を語り合っているワットの在りし日の姿を想像し、ますます自由なる創造(Creation Baased on the Sprit of Freedom)に憧れました。研究組織の大きさや研究費の多いさ、さらには頭の良し悪しですら必ずしも研究能力や研究レベルに比例しないことは過去の多くの事例が物語っています。
当研究所の名前CBN&DのCBNは、窒素Nとホウ素Bの化合物である窒化ホウ素BNの同素体の一つ(高圧相)で、立方晶窒化ホウ素cubic Boron Nitride(cBN)という物質を表しています。一方、DはDiamondの頭文字で、ダイヤモンドを表しています。DとCBNは各々地上第1番目、第2番目 In front of the statue of Sir Isaac Newtonに硬い物質で、いずれも切削や研削加工などの加工用工 Trinity College, Cambridge, UK具として広く用いられており、今では超精密加工、ナノスケール加工、高能率・高品位加工等の最先端加工技術を支える工具材料として無くてはならない存在になっています。
cBNに関する研究は私が大学に務めて初めに取り上げた研究テーマの一つで、研究すればするほどその魅力に取りつかれ、これまで一途に研究を続けてきました。cBNの持つ潜在能力は限りなく遠大で、ダイヤモンドとともに21世紀の加工技術を先導し、未来の科学技術を支えてくれるキーマテリアルとして多くの可能性を秘めています。目先の流行に惑わされずに将来を見据え、真実の探求を目指して研究を推進していくことが重要であると考えています。
CBN&Dナノ加工研究所長
市田良夫
